「なぁ、この字、なんて読むんだ?」
「ん?どれ…」
「ここんとこ」
「これは…」
天空城の一室。ガイが本を片手にゴウの周りを走り回っていた。
「最近どうした?急に勉強好きにでもなったのか?」
「ん?いや……そうじゃなくてさ…俺、今まで何にもしてなかったなぁって、思ってさ。も少し…マシに…うん、もっとみんなに為に何でも出来る大人になりたいんだ」
「なんでも出来る、大人?」
「おいっ、ソコで突っ込むんじゃねぇぞっ。マジ、へこむからさ…ユダとシンが……あいつらが帰ったら、俺……俺に任せろって、俺だって、やれんだぜってとこ、見せたいんだ……もっともっと大人になって……もっともっと、頼れるヤツになって……俺、俺……」
「……ガイ」
「なぁ、ゴウ……いつ、帰ってくんだろうな…なぁ…また、あの時間…戻って来る、よなぁ……」
言葉を紡ぐガイの両の瞳からは、涙が、流れていた。
「そう、だな…めずらしくガイが頑張っているんだ。きっと、戻ってくるさ」
「な、なんだよ…『めずらしく』ってさ」
「じゃあ『めずらしく』じゃなくなるくらい頑張ったらいい。そうしたらもう、だれもお前を子供だなんて言わなくなる」
「俺はもともと、子供じゃねぇよっ」
「なんだぁ?そうやってすぐムキになるところのどこが子供じゃないって?」
「わ、悪かったよ…」
ガイの涙に気付かないふりでいつものようにからかいはじめるゴウ。そうしなければゴウもまた…悲しみに囚われてしまいそうなのだった。
(ユダ、シン…俺達はまだこんなにも…前に進めていない…)
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