これまでの話
天界の王、ゼウスに反旗を翻すことを決めた六聖獣。しかし、戦いの準備が整う前に勝敗は決した。力の差は歴然だったのだ。
地上にユダ、シンが降臨している間に戦いは始まってしまった。いや…ゼウスはすべてを知っていて六聖獣が離れるのを待っていたのかもしれない。
地上での戦いの果て、シンはユダを庇い、瀕死となる。自らの時間を止める事で永らえたが、その直後、ユダはゼウスによって、天使としての全ての力を封印される。ユダの口からゼウスへの裏切りの言葉を聴き、それが天界に残っていた者達への刃になった。
ルカは重症を負い、未だ、目覚めていない。レイはそんなルカの傍を離れない。ゴウ、ガイは天空城から出ることを許されていない。謀反を起こしたというのに4人は生き永らえていた。ゼウスの本心が見えないまま、だだ、時間だけが流れていた。
そして、シンを助ける術を探す為のユダの旅も続いていた。
*神罰~Judgment of God~&昇華~Sublimation参照
【戒めの唇】The lip of the admonition 1
『天より降りし、紅き天使に示す。我が助けを得ようとするなら、地上の虹を手に入れよ。
その虹を願いにより、解き放てば、汝の願い、叶わん。願い、それは、ただひとつの魂。真実のみが、虹を輝かせる』
降り立った地に封印されていた言葉。それが、今のユダのすべてだった。古ぼけた地図の中央に示されたゼウスの御印…
「…これがその虹の在り処か…」
手にした1枚の羊皮紙が、真実なのか、確かめる術も力もない。しかし、ここに来てのゼウスの刻印。疑惑が首を擡げる。
「これがこの地に伝わっていたと…?」
「はい、いつから…とは言えぬほどの昔から…」
「そうか…」
「私は少しばかり、人の霊気というものを感じることができます。あなたの霊気は地上のモノでは無い。故にこの本の持ち主に値すると思ったのです。今が、その時だと…」
「…感謝する」
「どうぞ、お役に立ててください。そして、地上を永久にお守りください」
長老が、深々と頭を下げ、本を差し出した。
「長老っ、その本をあげてしまうのですか?」
その様子を見てユリウスが慌てたような声で聞く。
「ああ…予言は今、目覚めたのじゃ…」
長老の静かな言葉にそれ以上は言えなくなるユリウスだった。